開発現場に潜入!大野修聖が求める理想のウェットスーツとは?

2016年11月7日


世界への扉をこじ開け、今なお日本のサーフィンシーンを牽引する男、大野”MAR “修聖。

トップアスリートサーファーだけあり、日頃のコンディション管理はもちろん、戦う道具といえるサーフボード等のギアにもシビアな目を持っています。

MARの世界への挑戦を長年サポートしているのがQUIKSILVER。

実は皆さんのお手元にあるMade in JapanのQUIKSILVERウェットスーツはMARをはじめとしたライダー達とのテストセッション、フィードバックによって開発が進められているのはご存知ですか?

今回は去る某月某日、日本にて行われていたQUIKSILVERジャパンのウェットスーツ開発担当Mr.XとMARとの極秘ミーティングに潜入しました。


”サーフィンするなら、やっぱりボードショーツですね”

 

Mr.X(以下:X):僕が初めてQUIKSILVERのウェットスーツの製作に携わった時、ライダー達の意見をいろいろ聞いた中でMARだけはちょっと違う意見だった。大体普通は保温性とかの事をいうんだけど、”とにかくパドリング。肩周りがシンプルで動きが軽くなるものを”って言っていたよね?凄く印象的に覚えているんだけど。

 

MAR(以下:MAR):そうでしたか?.....。う~ん、やっぱり基本的にはボードショーツでサーフィンしたいんですよ。軽いし、自由に動けるじゃないですか。でも季節や場所、水温によっては寒いから、ウェットスーツを着るんです。波待ちの時も寒かったりしますし。でもいざテイクオフしちゃえば、暖かさって関係なくなりますよね? 極端な事をいうと、基本的にはずっと動いているから、波待ちの時とかの最低限の保温性だけでいいんですよ。これが一般のお客さん向けに販売するものとなると話しは違ってくると思うんですけど。

 

X:なるほどね。QUIKSILVERってボードショーツからスタートしたブランドだけど、やっぱりウェットスーツもそれと同じ位のコアなプロジェクトだと思っていて、しかもブランドの名前を冠している限りは、MARを初めとするアスリートファーストの思考で開発をしていって、それから広くお客様に、例えば保温性を加えるとか、どう満足してもらえるかっていうプロセスで作っていきたいんだよね。だから最初の意見はすごく貴重で、今なお課題として残ってるから覚えているんだよ。

 

“進化し続けるウェットスーツ” 

M:あとは、これからどんどん寒くなってくると、5/3mmのフルスーツにブーツ&グローブ、更にヘッドキャップって時もあるじゃないですか?もう見た感じ、完全ロボットで(笑)。それを劇的に変えられるウェットがQUIKSILVERでできたら最高っスよね。

 

X:そうだね(笑)。正直、冬のウェットってそれなりに重量がある。これは、ボードの浮力にも関係してくるから、ひょっとしたらサーフィンの邪魔になってるかも知れない。でも究極はボードショーツと同じ、もしくはそれ以上、軽くて動きやすくて暖かい、そんなウェットを作っていきたいし、あったら最高だよね。QUIKSILVERのウェットスーツを長年着ていて、進化を感じている部分はあるかな?

 

M:やっぱり生地は格段に進歩しているのを感じますね。それに年々、着やすく、動きやすくもなってるのも間違いないですね。

 

X:そうだね、ウェットの構造自体も進化してるからね。でもフルスーツは常に水の侵入をどう防ぐかというのが課題で、それを克服するために一般的にはウェットの着脱部に近い肩周りなどはボタンが付いたり、何重にも生地が重なったりして逆に複雑になってる。だけど僕らのウェットスーツはMARの言ったパドリング時の動きやすさのために、肩・開口部周りを出来る限りシンプルな構造にしているんだ。それが着やすさと動きやすさに関係しているんだと思う。

 

M:あっ!今ちょっとひらめいちゃったんですけど(笑)、例えばパドルの動き、水を後ろに掻いて、また前に戻すっていう一連の動きをサポートしてくれるウェットスーツがあったらいいんじゃないですか?サポーターみたいな感じというか。

 

X:それはもしかしたら技術的にできるかも…。

 

M:今、僕が気に入っているTECHNICAL(シリーズ)のロンスプあるじゃないですか。あのモデル、着易さという意味では普通だと思うんですけど、とにかく動きがいいんですよ。邪魔にならないというか。

 

X:そう。全身に特殊なカッティングが入っているからね。

 

M:あれを更に進化させて”パドルサポート・ウェットスーツ”ってどうですか? 正直言っちゃいますけど、ウェットスーツを着てサーフィンする時に何が面倒臭いかというと、みんなもそうだと思うんですけど、パドルなんですよ(笑)。テイクオフしちゃって波を滑ってる時にはよっぽどじゃ無い限りウェットを邪魔に思うなんて事は無いんですけど、だから一番にパドルで、それとドルフィンの時の負担が無ければないほど、絶対にいいじゃないですか?だからサーフィンに重要なのは、乗ったら基本的には板で、乗る前は基本的にはウェットなんですよ!

 

X:なるほど、だから最初に会って意見交換した時に、ライディングに影響しない膝やひねりのこととかの意見が出てくると想定してたのに、MARでさえ、やっぱりパドリングなんだって思ったんだ(笑)ちなみに「TECHNICAL」を着ている時は具体的にどう感じてるの?

 

M:パドルをしていて、サポートしてくれている感じがするし、体の機能を十分に引き出してくれていると思います。ちょっと着た感じはタイトですけど、動きは楽に感じますね。

 

X:「TECHNICAL」は伸縮性の低いパーツを意図的に、部分的に作ってるんだ。前は、どこのパーツも全身に同じ生地を使用するというのがウェットスーツの常識であったんだけど、このスーツは人間の筋肉と同じで、伸びるべき箇所には伸びる素材、締めるべき部分には伸びない素材をと使い分けているんだよ。これはある意味でウェットスーツの進化だと言える。伸びればいいでしょ的な時代もあったからね。

 

“MARも気になっていたケリーのスーツと究極のウェットスーツ”

 

M:ケリー(・スレーター)が11回目のワールドチャンピオンになった時に着ていた白いウェットも同じコンセプトですか?

 

E:あれは更にその延長線上で、”アクションをサポート”するというコンセプトで作ったプロトタイプなんだよ。凄く簡単にいうとバネみたいな感じって言ったらいいのかな。

 

M:ケリーは何て言ってました?

 

X:残念ながら、本人からのフィードバックは受けていないんだけど、ワールドチャンピオンが懸かった試合で着慣れたウェットスーツから、わざわざ替えて着てくれたから気に入ってくれたと思う。やっぱりギアにはシビアだから。

 

 

M:あれ発売すればよかったんじゃないですか?

 

E:それにはいろいろ理由があってね.....。発売するとかなり高い価格設定になっちゃうというか(苦笑)。で、今の流れでは「TECHNICAL」モデルやウェットや筋肉の話になったけど、そういえば、S.U.L.(超柔軟素材)の「PERFORMANCE」モデルのスーツも、かなり気に入っているよね?

 

M:あっ、あれ、今までない無い位サイコーです!(笑)あのウェットスーツはマジで最高だと思います。あのスーツで革命的にQUIKSILVERのウェットが変わった感じがします。素材も抜群にいいです。

 

X:そう、あのモデルはまた違うコンセプトを元に作っていて、素材、ゴムから開発したものなんだ。一般的にウェットスーツって“どれだけ伸びるか”がいいとされていて、つまり伸縮率が重要視されている。でも実はあの素材は、“どれだけ伸びるか”じゃなくて、“どれだけ弱い力で伸びてくれるか”の考えから作られたんだ。つまり、少ない筋力で簡単に伸びてくれる素材で、だからストレスも少ない。

 

M:そう!ホントにそうです。あのウェットスーツが一番肩周りのストレスが無いです。今まででベストなスーツですね。肌にピタッと、なおかつ伸びがある感じで。今でも気に入ってこの「PERFORMANCE」シリーズはずっと着てますよ。そっか、それと「TECHNICAL」、更にケリーのも加わって、パドリングがもっと楽になって、しかも薄くなったら.....究極のスーツ出来上がりますね!(笑)

 

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