波乗りジャパン x クイックシルバー x 美術家 野老朝雄 コラボレーション インタビュー<前編>

2020年4月10日


 

■人と人とをどこまでも繋ぐ希望のうねりが、私たちのチカラになる

 

サーフィン日本代表「波乗りジャパン」の公式スポンサーを務めるクイックシルバーは、
古来より勝利をもたらす色として語り継がれる’’ 藍’’ が基調の、「CONNECT= 繋がり」をテーマとした新コレクションを発表しました。
ウェアに描かれる「波」デザインを手掛けたのは、美術家・野老朝雄(ところあさお)氏。 氏と私たちとを繋げてくれたのは、紛れもなくジャパンブルーと謳われる’’ 藍’’ とその文化の存在でした。

 

この幾何学から生み出された波デザイン’’ 組波紋様’’ は、どこまでも反復するエンドレスパターン。
悠久を感じさせる波や自然の姿など、多くの示唆に富んだ普遍性を持つ意匠が素晴らしく、世界中の人々が繋がるサーフィンの大会に相応しい。

 

―今回のコラボレーションはどんな経緯で始まりましたか?

 

日本に古くから存在し今に伝わる「藍色」は、僕の近年の研究対象であり、「繋げること」はライフワークのひとつです。
藍という植物をいまも大切に繋いでいる地域が徳島なんですが、それをもう一度広く知ってもらうための仕事を請け負ったりもしています。
その流れで、もともと藍の普及に真剣に取り組んでこられた地元の人たちとお会いすることができて。そのひとりが徳島・海部のローカルで、全国的にも名を知られる藍染め伝道師のサーファーでした。
そして彼がクイックシルバーを紹介してくれたのがきっかけです。

 

 

―野老さんも篤い関心を寄せている藍。それに対する思い入れは?

 

心からこの文化が続いていって欲しいという願いがあります。
単なるひとつの色の繋がりかもしれないけれど、それを一過性のイベントのなかで終わらせるんじゃなくて、その後も若い世代に語り継がれていくように。
今回、「この色にしたい」って決めていたのが、藍のなかでも“勝色”っていう日本のラッキーカラーです。
江戸時代、葛飾北斎や歌川広重が描いた版画を見る限り、絵のなかでたくさんの人たちが青を着ています。
特定の支配階級の人間たちの色ではなく、“みんなの青”だったんだなと。それをこれからの時代にもう一度復活させたいですね。

 

 

ー50 年以上の歴史あるクイックシルバーの本質に触れるため、フランスにあるデザインヘッドオフィスを訪れたときの体験が今回の「CONNECT」というテーマにも繋がったと伺ったが、どんな日々でしたか?

まず、働く環境のなかに密接にサーフィンが存在していて、あの場所にブランドのデザイン拠点があるっていうのは、すごく意味のあることなんだなって感じました。
僕はサーフィンはやらないけれど、何だか羨ましかった。それと、「死といつも隣り合わせで、海から帰ってくると、オレは生きてるんだ! って仕事をするんだよ」みたいな話を聞いて。
無事に生きていることを日々感謝して……っていうのはサーファーたちが持っているすごい感性で、彼らが常日頃そういうマインドで暮らしているっていうのを、そこで初めて知りました。僕にとってはこの旅での経験がとても大きくて……。
彼らが命を懸けてサーフして仕事をするように、命懸けでコンパスに向かう……そんな風にはできないけれど、それくらいの意識を持って創作に向き合いたいなと思いましたね。

 

 

インタビューの続きは、次回の<後編>でお届けします。お楽しみに。

 

 

(プロフィール)

野老朝雄(ところあさお)

1969年、東京生まれ。幼少時より建築を学び、江頭慎に師事。
2001年9月11日より“繋げること”をテーマに紋様制作を始め、美術、建築、デザインの境界領域で活動を続ける。単純な幾何学原理に基づいた、定規やコンパスで再現可能な紋と紋様の制作や、同様の原理を応用した立体物の設計/制作も行なっている。

2013~16年「大名古屋ビルヂング」のための下層部ファサードガラスパターン制作

2016年「東京2020オリンピック・パラリンピック」エンブレム

2017年「大手町パークビルディング」のための屋外彫刻作品TOWER OF CONNECT制作

2019年 佐賀県立九州陶磁文化館にて[有田×野老]展