@特別企画 SURF1st.編集者 赤井得士氏が語る
BIG WAVE INVITATIONAL IN MEMORY OF EDDIE AIKAU
「想像を超える、ワイメアの波」。
surf1st waimeabay photo kimiro Kondo
写真:ワイメアベイ Photo by Kimiro Kondo

「想像を超える、ワイメアの波」 

この冬、07-08年にかけて、私の朝の日課が一つ、増えた。それは、事務所に出勤してパソコンを開き、インターネットに接続し、米サーフライン社のライブwebカメラ(※注)で“ワイメア”の波 をチェックすること。2月6日にこの文章を書いているが、今日は、ワ イメアはブレイクしていないようだ。webカメラの映像は、30秒間だけ無料で見ることができる。なぜ“ワイメア”の波を毎朝チェックするのかというと、それはもちろん、エディ・アイカウ大会が気になるからだ。今季は特に気になる。

なぜなら、日本人がエントリーするからだ。衆知の通り、ワキタ(脇田 貴之)が日本代表として、たった一人だけ招待されている。過去にこの エディ・アイカウ大会に出場した日本人は、1990年の久我孝男、一人だけだ。久我は、1987年に招待を受け、4シーズン目に開催された第2回目に出場した。当時の心境などを語った対談「脇田貴之×久我 孝男」(※注)は、近年のサーフィン記事の中では、特に注目を浴びる インタビューとなった。  

「ワイメアってね、一回(波を)喰らって、水面に出る前にもう一発 喰らうとヤバいんだよね」と久我が言うと、ワキタが聞く、「どうなっ たんですか?」、そして久我が応える、「…血ぃ吐いた」。波の中で気絶しそうになって、小さい頃からの思い出が頭の中に浮かび上がった 時、カラダが一瞬楽になり、自分の死を感じた久我は、「ヤバい!死ん じゃう!」と我に返り、リーシュコードを掴んで思いっきり引っ張っ て、水面に無理失理出た。そして海面に出た瞬間、パァッと血を吐いたと言う。

人間の浮力によって自然に浮上するのではなく、息継ぎの限界を超えて、酸欠状態になってから無理に海面を目指したからだろう。この時の波のサイズは15フィートくらいだったというが、タイミング次第では、そのサイズでも死に至ってしまう可能性があるのだ。  

エディ・アイカウ大会は現在、地球上で最も歴史あるビッグウェイ ブ・コンテストとして認知されている。20フィートを超える波がコン スタントにブレイクする日、所謂「The Day」に開催される。いくらサーフィンの聖地“冬のノースショア”と言っても、「The Day」がこの冬の間に来るか否かは神のみぞ知ること。
過去23年間の大会史の中でわずか7回しか開催されていない事実を知れば、その頻度の少ないことが伺える。

20年ほど前、初めて冬のハワイを訪れた時のことを思い出す。ホノルル空港からノースショアに向けてクルマを走らせ、いくつかの街を経て、パイナップル畑が広がる丘を超えたところで、遠くにノースショアの海岸線が目に入った。うっすらと線になったうねりのラインといくつかの白波が見えた。
同行していたノースショア経験者のプロサーファーが一言、言った。
「今日はでかい…、ワイメアだな…」 当然、初体験者の私は当時、その言葉の意味がわからなかった。
それか らクルマを走らせ、緩く長い下り坂を降りていくと、ハレイワに到着した。左手に海が見渡せる道路から、遥か沖で割れる大きな波が見えた。 サイズは…、わからなかった。

さらにクルマを走らせ、左手にまた海が 見える場所に指しかかると、「ここがラニアケア、やっぱりデカいね、 真っ白だ」と前出のプロが言う。その後、前方に視界が広がり、右カーブが現れたところで、路上駐車してるクルマが数台あった。私たちのクルマもそこに停めた。
「ここがワイメア。ちょっと見てみようか」 湾の西側の道路から、ワイメアベイを見下ろす。周囲には、同じように 波を見てる観客や三脚に望遠レンズを装着したカメラを載せてかまえて いるフォトグラファーが居た。湾の東側の突端の少し沖に、数人のサー ファーが浮いている。肉眼で見ると、サーファーがとても小さく見える。沖から数本のうねりがやってきた。うねりはラインナップで波待ちしているサーファーたちゆっくり近づいてくると、もっこり盛り上がり、切り立ち、波頭を持ち上げた。

その場所(ピーク)でサーファーが パドルしている。一人のサーファーがテイクオフをすると、真っ直ぐ降 りていく。その波を降りていくサーファーがとても小さく見える。サー ファーが滑り降りていく間にも、波は盛り上がり続ける。その時、ようやく、その波が相当にデカい事に私は気が付くのだった。  

ワイメアの波を言葉で言い表す事は、私には難しい。鍛え上げられた本物のサーファーさえも死に追いやってしまうパワーを秘めるワイメアの波。もし貴方がサーファーなら、死ぬ前に一度、肉眼でワイメアの波を見ていただきたい。また、できることなら、その波に乗ってもらいたいと思う。

PS

webサイト「FNMOC(WW3)」をチェックしてみると、144時間後、2月11日に15〜18フィート級のうねりがノースショア に到達する予想図が閲覧できた。もしかしたら、その日、または翌日の12日、20フィートを超えるかもしれない。
The Bay Call The Day...、ワイメアから目が離せない。

赤井得士(編集者/SURF1st誌編集部所属)
http://www.hobidas.com/blog/surf1st/world-peace/

※注 more info サーフライン・ライブwebカメラ「ワイメア」
http://www.surfline.com/reports/report.cfm?id=4755
対談「脇田貴之×久我孝男」
http://www.quiksilver.co.jp/frames/bigwave_jp_wakita.html
うねり予想のFNMOC(WW3)
https://www.fnmoc.navy.mil/public/